霞む世界
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眼鏡がなければ、自分は何も見えない。
それは大変困ったことではあるけれど、少し幸せを感じることがある。
はっきりと、形の見えないこの世界の全ての物は。
まるで。
自分のこの募る想いに。
似ている物だと。
そう思えてくるから。
眼鏡が、ないとき。
彼女に視線を向ければ、霞んで。
儚くて、美しくて。
とてもとても綺麗に見えるのだ。
この、霞んだ綺麗な世界は。
自分だけの物だと思うと、気分がいい。
溶けない粉雪
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兄さんは、ずるい。
あんなに、変な人なのに。
あんなに、自由奔放で奇抜なのに。
人気があって、優しくて。
綺麗で、逞しくて。
俺の欲しい物全てを持っているんだ。
「せんせい」
兄さんを呼ぶ彼女の甘える声も。
「せんせい、すき」
兄さんに想いを伝える可愛らしい声も。
愛しい笑顔も。
全て。
全部全部持っているんだ。
俺には、どうしたって手に入れることが出来ない物を。
雪が、ちらついている。
手に取ってみると、体温でみるみるうちに溶けてしまう。
そう、兄さんに温かみを感じているあのこのように。
溶けなければいい。
ずっと、そのままでいればい。
ずっとずっと、綺麗なままで。
結晶のままで。
形を保っていて欲しい。
兄さんに、溶かされないで欲しい。
溶けない粉雪なんて、ありはしないけれど。
らんま沐絲独白と、GPOの空×咲良←航 みたいな。
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